隆信との歌のやりとり(3)建礼門院右京大夫集から
3.あなたに思われるとはうらやましい
隆信は、人の噂を知っているよとほのめかして、歌を贈ります。
「浦やまし いかなる風の なさけにて
たく藻のけぶり うち靡きけむ」
選字は、「う羅や万しい可那る風農な佐介
耳て多久藻能希ふ利う遅な
ひ支け無」
歌意は、「うらやましいですね。どこの誰に心ひかれて靡いたのでしょうか。」
海藻の「藻を焚く煙が風に靡く」とは、女性が他の男性に心を移すことの例えに使われます。
「靡く」は、旗などが風に押されて横に動くように、魅力にひかれて気持ちが移る様子を比喩的に表しています。
ここでは、隆信が聞き知った作者と資盛の噂にかこつけて遠回しに皮肉を言っている歌ですが、自信家の隆信らしく私というものがありながら、心を移すなど、その噂の人がうらやましいですね、と余裕を見せているように感じます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社