安徳天皇のお誕生など(3)建礼門院右京大夫を書きつつ
3.おとなりの笛の音も
お隣から聞こえてくる笛の音さえも、作者には懐かし、昔の自分を思い返してしまいます。
「となりに庭火の笛の音するにも、としどし、内侍所に御神楽に、維盛の少将、泰道の中将などのおもしろかりし音ども、まづ思ひ出でらる。」
選字は、「とな利に庭火の布えの音須るも登志
度し内侍所乃御可久羅耳維盛の少将
泰道の中将なと能於もし路可利し年と
毛まつ於も日いてら流」
となりのお庭でたく篝火に笛の音がするのも、毎年、内侍所の御神楽に維盛の少将や泰道の中将等がたいそう趣のある音色を出されていたことをまず思い出します。
連想が次々にわき起こり、お隣の笛の音にも心を動かされる作者です。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社