安徳天皇のお誕生など(1)建礼門院右京大夫を書きつつ
1.宮のお産など
中宮徳子が二十四歳の治承二年(1178)十一月十二日に言仁親王(安徳天皇)をご出産になります。哀切とともに語られる安徳天皇の短い歴史が始まり、遠くから耳にする作者の姿があります。
「宮の御産など、めでたく聞きまゐらせしにも、涙をともにてすくるに、皇子むまれさせおはしまして、春宮立ちなど聞こえしにも、思ひつづけられし。」
選字は、「見や農御さんな登免弖た具支記ま
ゐ羅せし爾も那三多を登毛耳て須
久流爾皇子むまれさ勢おはし万志
て春宮立なと支故えし二も思ひ徒ヽ介
ら礼志」
中宮徳子さまのご出産など、おめでたいこととお聞きしていましたが、宮中のことが懐かしく思い出されてつい涙がこぼれる毎日でした。皇子がお生まれになり、公式に皇太子になられたと伺って、かつての日々を思いだしました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社