月明かりにうたげの追憶(7)建礼門院右京大夫集を書く
7.心にとどめて
隆房が硯を持ってこさせて、自らの扇に書いた歌が次に示されます。
「かたがたに 忘らるまじき こよひをば
たれも心に とどめてを思へ」
選字は、「か多か堂にわ春羅流まし支
こよひを者たれ毛こヽ路爾登ヽ
免弖(を)於も遍」
歌意は、いろいろ忘れられない今宵のことを、みな心にとどめて覚えておいてください。
これから、まき起こる嵐の様な日々を予期していたかのような隆房の言葉は胸に迫ります。まさに平家一門の絶頂期の宴ということになるでしょう。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社