月明かりにうたげの追憶(4)建礼門院右京大夫集を書く
4.花は散るも散らずも
朗詠の声や管弦の音が響き、夜も更けていきます。しかし、それだけでは終わらず、帰りがたい様子が描かれます。
釈文:「あけがたまでながめしに、花は散り散らずおなじにほひに、月もちとるにかすみあひつつ、やうやうしらむ山ぎは、いつといひながら、いふかたなくおもしろかりしを、御返し給はりて」
選字は、「あ希可たま弖なか免し爾花者
千利ちら須おな志に本ひ耳月
毛比とつ爾可数三あひ徒ゝやうヽヽ志
羅無山支はいつとい飛那可らいふ可た
な久於も志路可りし越御返し
多まは利て」
大意は、「明け方まであたりの景色を眺め、散るも散らぬも花は美しく、月も一つにぼんやりとして、次第にしらんでくる山の際はいつものことはいいながら、言葉に表せないほど趣が深かったので」
あまりにも情趣が深く、立ち去りがたい情景が浮かびます。さて、このような時、この方々はどうされていたのでしょうか。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社