交わしたい歌の贈答(4)紅葉の季節に忠度より
4.深い山の紅葉をあなたに
「君に思ひ深きみ山の紅葉をば
あらしのひまに おりぞしらする」
選字は、「き三爾於も日希可支見や万農
毛遅越者あ羅志能飛萬耳
折利所しら須る」
歌意は、深く想っているあなたに、深山の紅葉を嵐が止んでいる間に手折ってきました。ちょうど良いこの機会に私の気持ちをお伝えします。
「深き」に、思いの深さと山の奥深さをかけています。「あらし」は「嵐山」と「嵐」との「折り」は、「手折る」と「折を見て」との掛け言葉。
さすがに、歌人としての技巧を用いて巧みな歌となっていますが、ここまでよくできていると、本心かしら、と勘繰りくりたくもあります。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社