萌えいづる春になり(4)和漢朗詠集を口ずさむ
4.さわらびの萌えいづる
四句目は「石そそく垂氷のうへのさわらびの
萌え出る春になりにけるかな」
選字は、「い盤そそく多るひのうへ能さわらひの
も衣いつる春璽な利璽介る可那」
「石そそく」の「そそく」は濁らない清音。
「垂氷」はつららのことですが、『万葉集』では「たるみ」で滝のことです。
ここで、万葉集の歌もご紹介しましょう。
「石走る 垂水の上のさわらびの萌え出る春になりにけるかも」志貴皇子
こちらは、一気に読み上げた感があり、春の歓びを直裁に歌っています。
万葉集の方が、より親しまれているかもしれません。滝の上の小さな蕨の芽に目を留めて、萌えいづるこれからの春を予感させています。視点が広く移って、自然の変化を敏感に歌っています。
参考文献:和漢朗詠集 川口久雄 講談社