萌えいづる春になり(2)和漢朗詠集を口ずさむ

2.下の句をつけたのは

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

 「気霽風梳新柳髪 氷消浪洗旧苔髭」都

読み下し文は、「気霽(は)れては風新柳の髪を梳る
        氷消えては浪旧苔の髭を洗ふ」

意味は、天気が晴れて春風はあたかも美しい人の髪を梳るように、新芽をふいた柳の枝をゆらしています。池の氷が消えて波が水辺の苔に寄せているのは、髭を洗っているようです。

『十訓抄』では、都良香が羅生門を過ぎ上の句を詠じたところ、楼上の鬼が下の句をつけたという。*①

「髭」の表現がいかにも鬼を連想させて、おもしろい逸話です。もっとも鬼といって人間なのかもしれませんが。
出典:和漢朗詠集 川口久雄 講談社