春立つ日に詠む(5)和漢朗詠集より

5.かすかな春風にも

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

 「柳無気力条先動 池有波氷尽開
  今日不知誰計會 春風春水一時来
」白

読み下し文は「柳気力なくして条(えだ)先づ動く 
       池に波の文ありて氷尽く開けたり
       今日知らず誰か計会せし 春の風春の水一時に来たる」

二句で白居易の絶句一種となります。
現代語訳は、「かすかな春風にも、弱々しく柳の枝先がそよぎ始める。池の水はみな解けて、水面には波の模様が静かに広がっていく。

いったい誰が今日、立春だと計算して、春の風と春の水が同時にやってくるように、取り計らったのだろうか。」

春の始まりが絵画のように展開し、風が肌に触れ、指先にも伝わるような気がします。
 参考文献:和漢朗詠集 川口久雄 講談社