天の蒼蒼たる(1)荘子を書く

1.野馬とは

荘子

 「野馬也塵埃也生物之
  以息相吹也」

読み下し文は、「野馬や塵埃や、生物の息を以って相い吹くなり」
「野馬」とは郭注によると、『野馬とは游気なり』とあり、成疎では、『青春の時、陽気発動し、はるかに薮沢の中を望めばなお奔馬の如し、故に野馬という』

「野馬」とは、陽炎のことですが、こうしてみるとただの陽炎ではないのでしょう。暖かい春の日にゆれ上る気を野の馬に例えることは映像的です。生き生きとし、ほとばしる生気に満ちた空気の揺らぎが感じられます。

それが大和に入ると「陽炎」は、はかないものやほのかに見えるものを表すようになります。古今和歌集(恋)に、「かげろうのそれかあらぬか春雨のふる日となれば」とあります。
 
 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波書店