宗盛様から櫛を贈られたことがありました(3)建礼門院右京大夫集

3.紅の薄様に

建礼門院右京大夫集  祥香書

手紙の用紙の色合わせも、衣服の襲(かさね)に準じてきまりがありました。
季節に応じた色合いや、組み合わせが使われ、用紙は鳥の子紙、雁皮紙が用いられました。

 「たぶとて、紅の薄様に、あしわけ小舟むすびたる櫛さしたるが、なのめならぬに、書きておしつけれたりし。」

「あしわけ小舟」とは、繁った葦の間を抜けていく小舟のことで障害の多いことに例えています。この場合は、なかなか容易に行かない恋に例えているのでしょう。

そして、「むすびたる櫛」は、あしわけ小舟の模様を精巧に作った彫刻か象嵌を施した櫛です。意味は、「(櫛を)くださると、紅の薄様にあしわけ小舟の模様が施されていて大層美しい櫛で歌を書きつけて無理に受け取らされました。*①

櫛にあしわけ小舟の模様が彫ってあると、想像しただけでうっとりするような光景ですね。
 *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社