再び始まる自伝的物語(4)建礼門院右京大夫集から
4.秋きては
中宮にお仕えしていた女房に代わって詠んだのが次の歌です。
「秋きては いとどいかにかしぐるらむ
色ふかげなる人のことの葉」
選字を「あき記弖者いと登い可にか志具
流羅無意ろ布可介難る人の
こ度乃葉」
一種の歌を三行書にしています。一見して、行の幅が広がったり狭まったりしているのが分かります。自然の川の流れを想起させるかもしれません。
「しぐる」には、時雨が降る、と涙を流す、の意味があります。また、「紅葉の色が深くなる」と、「深く物思いすることの葉」をかけて、意味が複層的に広がりを持っていきます。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社