自然のいとなみを詠う(2)建礼門院右京大夫集から

2.雁はいつ帰るのでしょうか

日本へ渡り、冬を越した雁は春になると帰って行きます。その時期がまだ早いことから、歌に詠まれています。

　「はるがすみたつをみすてて行く雁は
　　花なき里にすみやならへる」　伊勢

関戸本古今集の一ページ目に書かれているので、覚えている方も多いと思います。建礼門院右京大夫の歌は、この伊勢の歌に依拠しています。桜の花が咲く前に早々に立ち去る雁を、引き留めたい思いが伝わります。

建礼門院右京大夫の歌の「かりがね」は「雁が音」から「雁」を表しています。
　参考文献：建礼門院右京大夫集　新潮社