松の間から見える桜花他(2)建礼門院右京大夫集から
2.遠い山の桜は白雲?
歌意の続きです。
「山の皆の桜が咲いたらしい。緑の松の間から夕暮れに西に沈もうとしている太陽に白く輝いて、いつまでも消えないあの白雲よ」
遠山の桜を白雲と見間違える歌の例は、『古今集』以来多く見られます。
「山の峡たなびきわたる白雲は遠き桜の見ゆるなりゆく」(貫之集)*①
確かに、山桜は白く輝く様が、雲のように見えます。山の中腹に立つと、向かいの山々に細波のように浮き立つ花に出会えるのは、春の楽しみです。
*出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社