芭蕉自筆、奥の細道を読み書こう(1)
1.行く春や
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老をむかふるものは、日々旅にして旅を栖とす。」から始まる松尾芭蕉の「奥の細道」は、人口に膾炙され親しまれています。
ただ、松尾芭蕉が「奥の細道」を自らどのように書いていたかに触れることはあまりないでしょう。
上記の釈文:「むつましきかぎりは、宵よりつどひて、
舟に乗りて送る。千じゅと云処
にて、舟をあがれば、前途三
千里のおもひ胸にふさがりて、
幻のちまたに、離別の涙をそそぐ。
行春や鳥啼魚の目は泪 (ゆくはるやとりなきうをのめはなみだ)
これを矢立の初めとして、行道」
所々に書き癖が散見されますが、リズムよく丁寧に書かれていると思います。
変体かなも多用されているので、前半は読みにくいかもしれませんが、この時代も普通に
こうしたかな文字が使われていたということを示しています。
書作品として俳句を書くときはあまり変体かなを使わずに、作者の意図を尊重した書き振りが多いようです。ただ、書表現として様々に書いてみることは、興味深いことなので、これから挑戦してみたいと思います。