貞心尼に代りてよめる良寛歌(1)

1.良寛と貞心尼との出会い

良寛書 良寛の名品百選   祥香臨

貞心尼は、和島村の木村家草庵へ和歌の指導を依頼するために良寛を訪ねました。それから、良寛の示寂までの短い間でしたが温かい交流を続けました。

貞心尼は寛政十年(1798)新潟県長岡の生まれで幼名をマスといいます。十七歳で、北魚沼郡小出島の医師、関長温に嫁いだが、死別します。二十三歳のとき柏崎閻王閣の眠竜尼・心竜尼の弟子となり、貞心尼となります。

二十九歳の頃、長岡市郊外の閻魔堂の庵に住し、その秋に良寛を訪問するのです。

「貞心尼に代りてよめる
   萩が花咲けば遠みと故郷の柴のいほりを出でて来しわが」*①

書線の動きが滑らかで、遊び心にあふれるような書きぶりです。上記のままでは、お読みになれない方が多いと思いますが、なんとも言えない文字の揺れを感じていただけるのではないでしょうか。

和歌や詩のもつ音の響きを生かそうとすると、同じ音の繰り返しが起きます。その時に、全く同じ文字を使いますと、単調になってしまいます。それを避けるために、音が同じで形が異なる変体かなを用いています。

良寛の書も書き振りは、単体で読みやすいのですが、秋萩帖を学んだこともあり、草かなが多用されています。次回は、選字や筆法を見ていきましょう。

                *出典:良寛の名品百選 加藤憘一編著