維盛の恋に口を挟む(5)建礼門院右京大夫集を書いて

5.道芝の露

建礼門院右京大夫集 祥香書

まるで一幅の絵を見ているかのような光景です。愛する人を一人残して行く
男に名残を惜しむように道の芝草におかれた露が夜明けの月の光に映っています。
そのシーンを思い浮かべながら詠むと、

 「おきてゆく 人のなごりや をし明けの 
  月かげしろし 道芝の露」

選字は、「お支て遊久人農那こ利や越四
     那希の月可け志ろし三遅
     し盤の露」

鑑賞:はかないもののたとえに、「道芝の露」といいますが、他にも和歌に詠まれています。
  「きえかへりあるかなきかの我が身かなうらみてかへるみちしばのつゆ」小大君集 62
   『新編国歌大観第三巻私家集編1 歌集』角川書店

  「みちしはのつゆもあやしく かるびたる身のありさまかなとぞおぼししらるる」
   有明の別(12C後)

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社