自分の存在を忘れる(1)荘子・物を斉しくする

1.対立や差別は

荘子 祥香書

人々が、現実世界の中に、大小・長短・彼此・善悪・美醜・生死などといったさまざまな対立や差別を認めているのは、なぜでしょうか。荘子はこう考えます。それは、人間のかってな認識や判断であって、真実のすがたではない。両者の差異は、ところが変われば逆転してしまうものだ。

それは、一時的なもので、相対的であるにもかかわらず、人は絶対のものであると勘違いしているのです。どのように、こうした思い違いが起こるのかをたとえ話から説いていきます。

「斉物論」とは、「物を斉しくする論」の意味で、彼此・是非の差別観を超えて万物斉一の理を明らかにする篇である。*①

人は、自分を認めて、そこからこの世界を見ています。
出典:① 荘子 [内篇] 金谷治訳注 岩波書店