夏を涼みつつ朗詠したい詩歌を(9)和漢朗詠集より

9.下を流れる水は

釈文:「したくヽる水に秋こそかよふなれ むすぶいづみの手さへすずしき」中務

選字は「したくヽるみつにあ支こ所可よふ奈れ む春ふいつ美のてさへ春し支」

鑑賞:『新千載集』夏に「題しらず 中務」、『中務集』「泉」に出る。共に第三句は「かよふらし」となっている。

『謡曲』「誓願寺」に「我も昔は此寺に、値遇の有れば澄む水の、春にも秋や通ふらし、結ぶ泉の自らが、名を流さんも恥づかしや」とこの歌を引用する。

現代語にすると「木の下を流れる水は、夏だというのに、もう秋の気配があるようだ。泉の水を手ですくうとひんやりと涼しく感じられる。」

参考文献:和漢朗詠集 川口久雄訳注 講談社学術文庫