まことの道へ入った人さへ(1)建礼門院右京大夫集を揮毫して
1.出家をした人
建礼門院右京大夫の心中が語られていきます。
「知りたる人のさまかへたるが、来むといひておともせぬに、
たのめつつ 来ぬいつはりの つもるかな
まことの道に 入りし人さへ」
選字は、「志利たる人の佐ま可遍多流可来むと
い日弖お登毛勢ぬ爾
たの免徒ヽ来ぬい川者里能津もる
可難まこ度の三遅耳以利し
人佐へ」
大意は、知人で出家をなさった方が来ると言っておきながら、音沙汰がないので、
お待ちしているのに、おいでにならないのは偽りが積み重なることです。あなたのように、まことの道を求めて出家した人でさえも。
かなり手厳しく、ピシャリとお詠みになっていますね。ただ、出家者を批判するというよりも、ここでは思い人である資盛のつれなさを、出家した方でさえもこうなのだから、仕方のないことだという気持ちがあるのではないでしょうか。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社