憧れの君を見る人の(2)-建礼門院右京大夫

2.維盛を見る女性は

建礼門院右京大夫集  祥香書

頭中将実宗の歌
「うらやまし 見と見る人の いかばかり なべてあふひを 心かくらむ」

歌意は、「うらやましいことだ、維盛を見るすべての女人は、どんなにか
     一緒になれる日をひそかに願っていることだろうか」

語彙注:「見と見る人の」おなじ言葉を動詞の間でつなぎ、強調する用法です。

    「あふひ」は「逢ふ日」と「葵」をかけています。
    賀茂祭りの日に、葵を社前、牛車、柱、簾などにかけ、衣冠にも挿す
    ので、「かく」は葵の縁語になります。*①

和歌において、変体かなを用いる理由は、和歌の用法に縁語や掛詞があるからです。例えば、先の歌で「あふひ」を「逢う日」とか「葵」と書いてしまうと、どちらかの意味だけに限定されてしまいます。

古典の和歌や文章を書くときには、注意が必要な点でしょう。

 *出典:①建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江 新潮社