良寛の書、一行物は茶掛になる(1)
1.白雲流水共に・・・
良寛の一行書きです。
阿部家に所蔵されている一幅です。
釈文は「白雲流水共に依々」
茶道具としての墨跡の存在価値は極めて重いものがあります。東山時代から室町末期に移り、次第にその役割を増した墨跡は、利久の頃には、掛物の第一にと尊ぶべきものとしていいふらされるに至り、主要茶会記にも、これが実証されています。
そのわけは、茶の湯の背景に禅宗が存在するからです。「茶禅一味」ならば当然のことといえましょう。ただ、墨跡には数に限りがあり、一般茶会に常に掛けることなど望むべくもありませんでした。これに代用するものとして一行や画讃が、頻繁に用いられることとなったのは衆知の通りです。
墨跡を拝し、まず何をするかです。
第一に、筆者、第二に内容、第三に筆勢、第四に伝来、第五に保存状態、第六に表装といことになります。*①
この場合、第一はもちろん、良寛大愚です。前回の「愛語」とは異なり、線がよく流れています。
*出典:茶の掛物 千宗室監修 淡交社