後の世語りにも(3)和泉式部日記から

3.軽々しく外出など

釈文:「まいてときこゆ。『かろがろしき御ありきすべき身にてもあらず。なさけなきやうにはおぼすとも、まことにものおそろしきまでこそおぼゆれ』とて、やをらすべり入り給ひぬ。」

選字は「まい弖度きこ遊可ろヽヽし支御あ里幾須へ 支身耳て茂阿ら寸難さ希奈きやう爾 はお本春登も満こと二裳於曽露しき 万傳こ處おほゆ連と弖や越ら寸遍り入利 多ま比ぬ」

鑑賞:「まいて」「まして」の穏便。ましてや『後の世語り』など考えられないの意味で、宮からの求愛を拒んでいる。

大意は「ましてや後の世語りなど考えられないと申し上げた。宮は『私は軽率に外出してかまわないような身分ではありません。心ないことをするとお考えかもしれませんが、本当にこんな所にとどまっていてはどんなことになるかわかりません。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社