思ひがけない月夜の逢瀬(11)和泉式部日記を書いて

11.古いしきたりに

釈文:「ふるめかしう奥まりたる身なれば、かかるところにゐならばぬを、いとはしたなき心地するに、そのおはするところにすゑ給へ。」

選字は「布流め可しうお供まり多る身那連八 賀ヽると許ろ二ゐ奈者ぬを以度者し多奈 支心遅寸類爾曽能お盤須るとこ露二寸衛 多万へ」

鑑賞:「ふるめかしう奥まりたる身」とは自分の皇族としての不自由な身を述べている。古いしきたりに縛られて、殿舎で人に世話を受けながら奥ゆかしく暮らしをしていることを指す。だが、これは額面通りに受け取れるだろうか。

大意は「皇室の身分では古いしきたりに縛られて、かしずかれている不自由な身なので、こういう所には座りつけていません。どうも居心地が悪いので中へ入れていただけませんか。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社