思ひがけない月夜の逢瀬(8)和泉式部日記を書いて

8.都合が悪いと

釈文:「女、いと便なき心地すれど、なし、ときこえさすべきにもあらず、ひるも御返りきこえさせつれば、ありながらかえしたてまつらんも、なさけなかるべし」

選字は「女以登 便奈支心地寸連と奈し登き故えさ寸 へ支耳毛あ羅寸飛流も御返り支こ盈 佐せ川連八愛里那可らか遍し多傳まつ ら無もな佐希可る邊志」

鑑賞:「女」物語で主人公が「男・女」と呼ばれるのは恋愛の高揚など特定の局面に限られる。「便なき心地」は折が悪い。都合が悪い。

「ひるも」は前の「なぐさむと・・・」の歌をさし、お昼に返歌をしたのに居留守を使うわけにもいかないことをいう。

大意は「女は都合が悪いと思ったが、いません、というわけにもいかない。お昼に返歌をしたのに、家にいながら宮を追い返すことも無情であろう。」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社