有明の月、雲までも平通宗を思い出し(3)建礼門院右京大夫集を書いて

3.有明の月を眺めると

釈文:「思ひいづる 心もげにぞ つきはつる なごりとどむる有明の月」

選字は「於も飛徒る心裳希二つ支者川る 那こ里度ヽ牟流あ利阿希の月」

歌意は「今は亡き通宗さまを思い出すにつけて私の心は、かなしみまでも全くなくなってしまいます。思い出をとどめる有明の月を眺めると。」

鑑賞:通宗様と丁々発止のやりとりで、多くの経験を積んだ女房らしく才気盛んな様子がかいま見られる。資盛の死によって「耐えがたし、つらし」といってばかりではなかった芯の強い女性であったことがわかる。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社