平通宗との無邪気な言の葉も(2)建礼門院右京大夫集から

2.決して返事を

釈文:「『あなかしこ、返しとるな』とをしへたれば、『鳥羽殿の南の門まで追ひけれど、茨、枳殻にかかりて藪ににげて、力車のありけるにまぎれぬる』といへば」

選字は「あ難閑しこ返事と類奈と越志へ堂 れ盤鳥羽殿の南の門ま傳追日希連 登茨から多ちに可ヽ里て藪爾ヽ遣て 力車乃阿利介る耳満支連るとい遍八」

鑑賞:「鳥羽殿」京都市伏見区鳥羽にあった、白河・鳥羽上皇の離宮。規模が広大で林や泉水などのある庭園で極めて美しかった。鳥羽離宮・西南離宮ともいう。

「力車」は荷物などを積んで人力で動かす車。

大意は「決して返事を受け取るな。と教えておいたので鳥羽殿の南門まで追ってきたけれど、茨やカラタチに引っかかったけれど、藪に逃げて置いてあった力車に隠れました。と言ったので」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社