資盛がかつて蔵人頭だった時に(2)建礼門院右京大夫集を書いて

2.さめやらぬ夢

釈文:「このさめやらぬ夢と思ふ人の、蔵人頭にて書きたりけるとて、その名を聞くに、いかがあはれのこともなのめならむ。」

選字は「この沙免やらぬ夢と思布人の蔵 人頭耳て書き多梨希ると傳曽能名を 聞久に意可ヽあ者れのこ登毛那農免奈ら無」

鑑賞:「さめやらぬ夢と思ふ人」今もさめない夢の続きのように、亡くなったことがうつつとは思えず、あきらめきれない人、資盛のこと。

「蔵人頭」かつて資盛がその任にあったのは寿永二年正月二十二日から七月三日まで。

大意は「まだ夢のように現実のこととは思えずにいるのに、資盛がかつて蔵人頭だった時に書いたものだと言って、その名を聞くにも、感慨もひととおりのことであろう。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社