端午の節句に感じ、いだく思ひ(4)建礼門院右京大夫集から

4.菖蒲を葺いた軒のようすは

釈文:「あやめふく 軒端も見しに かはらぬを うきねのかかる 袖ぞかなしき」

選字は「あや免布久軒端も見し二か者 羅ぬ越うき年能閑ヽる袖曽可志支」

鑑賞:「うき」は「憂き」と「埿(うき)」とをかける。「うきね」として「埿根」(泥中に生える草の根)と「憂き音(ね)」にかける。『千載和歌集』(哀愁)「あやめ草うきねを見ても涙のみかからむ袖を思ひこそやれ」

歌意は「端午の節句に菖蒲を葺く軒端のようすも以前と変わりがないのに、根をかける袖に涙が落ちる私の身の上がかなしい。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社