維盛北の方との交流(4)建礼門院右京大夫集
4.建春門院との思い出
建春門院の思い出は、葦手書きにまつわることでした。葦手書とは、平安時代に行われた戯書(ざれがき)で水辺に葦などが生えた風景に草・岩・松・鳥などの形を仮名や漢字で絵のように描いたものです。
「秋の末つ方、建春門院いらせおはしまして、ひさしくおなじ御所なり。九月尽くるあす、還向あるべきに、女官して、葦手のしたえの檀紙に、たてぶみて、紅の薄葉にて、」
用字は、「秋の春衛つ可多建春門院いらせ於盤
しま志てひさし久お那四御所奈利
九月盡くるあ須還向あ流へき璽女官
志弖阿しての下絵の多无事璽たて不
み天久れ奈ゐの薄様耳て」
秋の終わりの頃、建春門院がおい出になられて中宮としばらく同席してらした。九月も終わる明日は、お帰りになるというので女院方から使いとして、葦手の下絵の
厚手の和紙を立文(書状を縦に包み上下をひねった書状の形式の一つ)にし、紅の薄様の紙に書いた歌が贈られました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社