俳諧と俳句「さみだれを」から(4)

4. 義経伝説と歌枕
「最上川」は日本三急流の一つで、歌枕としても知られています。古今和歌集の東歌、陸奥歌の中に
  「最上川のぼればくだる稲舟のいなにはあらずこの月ばかり」

歌意は:最上川を上り下りする稲舟、その「いな」(いや)というわけではありませんん。せめて今月だけ、お持ちください。上の句は「稲舟」の「いな」(否)の語を引き出す序詩となっています。*①

また、「白糸の瀧」は最上峡の象徴で歌枕となっていて、「夫木集」源重之の歌に

  「最上川滝の白糸くる人のここに寄らぬはあらじとぞ思ふ」
とあります。
そして、文治三年(1187)に義経が源頼朝に追われ、平泉に下向する際に舟でさかのぼったという伝説の舞台になった場所でもあります。*②

芭蕉自筆 奥の細道  岩波書店  祥香臨

この旅で芭蕉は川を下りながら、「最上川」と「白糸の滝」の歌枕や義経伝説を念頭に置きながら句を詠んだと思われます。
表現上も、「さみ堂禮を あつめて早し 
                最上川」

「さみだれを」は変体かなを用いて音の調べを大切にし、「早し」の左側にそわせる形で
「最上川」を置いたあたりは心憎いばかりです。おそらく、右の行に長い「し」を配置したため、単調にならないよう工夫したものと思われます。

次回は、西行歌にみられる「さみだれ」についてご紹介しましょう。
              *出典:① 和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編
                  ②出羽路の旅      梅津保一