俊成九十祝賀の贈答に(3)建礼門院右京大夫集を書いて

3.生きながらへて

釈文:「ながらへて けさぞうれしき 老の波 やちよをかけて 君に仕へむ」
選字は「那可ら遍弖希沙所う連志支 老乃波や遅夜を可幾傳君二仕へ無」

鑑賞:この歌は宮内卿の作。「けさ」は「今朝」に「袈裟」を響かせている。「老の波」は年の寄るのを波が寄せるのにたとえた語。

波が幾重にも重なることから、「八千代」を想起させる。「かけて」は波の縁語。俊成の立場で未来永劫、帝にお仕えしたいという決意を表す。
歌意は「生きながらえて、祝賀を飾る今朝はうれしく光栄に存じます。今後も幾千年長生きして、我が君にお仕えしたく存じます。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社