若き維盛の警固姿に(5)建礼門院右京大夫は

5.美しすぎると命が惜しい

建礼門院右京大夫集  祥香書

前回、頭中将は、「維盛のように、美しい容姿であったならば、命が惜しくてかえってよくないことだ」と述べています。

それは、なぜでしょうか。
現代では、美しさに羨望の眼差しが注がれることがあっても、その美にとらわれるのは良くないことだと考えないでしょう。

ところが、人の悩みの原因は、執着、欲望、怒りなどの心のはたらきである、煩悩だと気づいた釈迦牟尼が仏教の教えを説きました。*① 我が身が、かわいいと思い、大事に思うあまり執着することは、迷いにつながります。

そのことを、頭中将実宗はよくわかっていて、このように述べたと思われます。当時の、社会では仏の道をおろそかにせず、神社の大祭にも礼を尽くしていたことがわかります。

  *① 参考文献:維摩経 釈徹宗 NHK出版