読みにくいかな古筆を読んでみる(5)

5.頭の体操  Exercise of Brain
かな作品に使われる変体かなは一種類ではありません。

例えば、二行目の冒頭に使われている『堂』は『た』と読みますが、
『多』や『太』を使うこともできます。このように、何種類かある
変体かなの中から、作者が表現上、いいなと思える文字を選択して
いるわけです。

二行目の三文字目『處』は『そ』と読みますが、これも『曽』や
『所』でも全く問題はありません。

書き手として、どの文字を選ぶかは頭を悩ますことですが、楽しみ
でもあります。読み手としては、どの字を使うのかな、と推測する
こともできますし、書き手の気持ちになって、共に美の探究の道を
歩むこともできます。

変体かなの使用例は、時代によっても異なりますので、平安初期と
後期、また鎌倉時代などを比較することも興味深いと思われます。

と言うわけで、次の回では、同じ和歌をどう書いているか、比べ
て見たいと思います。